Chibirock-blog

ロックなバックパッカーの日常
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ブログ主・Chibirock
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Kaori Murakami

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良い物
スペクテイター〈29号〉 ホール・アース・カタログ〈前篇〉
スペクテイター〈29号〉 ホール・アース・カタログ〈前篇〉 (JUGEMレビュー »)

本関係者や読者から集めた自力で生きていくための道具を、自力で選ばせるホールアースカタログは、「インターネットが無かった時代のGoogle」と言われ伝説化。最終号に掲載された「Stay hungry, Stay foolish」のフレーズを引用したスティーブ・ジョブスをはじめ、今となっては大物となった人物も大勢このカタログに大層影響を受けていたとか。そんなカタログ気にならないわけない。と、この本で日本に及ぼした影響だとか実際に作った人のインタビュー(後編)とか読んでから、本物を渋谷の古本屋まで見に行ってしまった。英語びっしりだし今カタログから買い物もできないしで買わなかったけど、1万2千円なんて値も納得のいい貫禄だった。
良い物
Songs & Portraits
Songs & Portraits (JUGEMレビュー »)
Third World Love
少し前から日本にもやってきはじめたイスラエルジャズ。4人ともどもイスラエルをはじめ、世界中で活躍する凄腕。ぜつみょーなジャズ&地元音楽のミクスチャーを実現しております。
良い物
まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)
まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書) (JUGEMレビュー »)
山井 教雄
ちびろっくのようなアホにもわかる、漫画で解説パレスチナ問題。ユダヤ人とパレスチナ人の子供、猫でお送りする。どちらの側に偏るではないバランス感を保ちつつ、最後は意外なクライマックスを迎え、じんわりこさせた。



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怪奇!!「料理」が出ない中華料理屋
何日も何日も帰らず夜遊びしまくった挙句、肺炎に罹って死にかけた18歳。
あの時以来の親不孝を、はたらいてしまったかもしれない。


我が実家のある、Y浜市のG明寺駅商店街のど真ん中に、突如あらわる九龍城。

九龍城


ではなく、




恐らく太古の昔から、こうして堂々と鎮座しているであろう中華料理屋、K州亭。
常々、家族ぐるみでその存在を気にし続けていたのだが、足を踏み入れたら取り返しのつかないことになりそうな気がして、これまで店の前を通り過ぎるだけにとどめていた。


ヴィム・ヴェンダースの映画でもフィーチャーされた、日本が誇る伝統工芸品、食品サンプルの出来はすこぶる良い。

チャーハン

「ヤキメシ」という呼称にこだわっていそうなこと以外は、様子に特段かわった点はない。


春巻き

春ま……まき、巻揚の佇まいからは心なしか、「春巻とかそういうんじゃねーし」と他とは一線を画したプライドを感じる。


コン

麺類と同じサイズの丼に盛られた「コンスープ」は、生まれて初めて聞くものだが、ご当地中国・K州では、大変な高級料理なのに違いない。(2回ほどK州を訪れたが見たことは無い)


年季が入っている=長らく営業している=名店

そんな定説なぞどこ吹く風、昼時最高潮でも客が入っている気配が伺えない。
はて、ここは隠れすぎた名店なのか、はたまた惰性で居座り続けているだけの負の遺産なのか。

閉まりきらない扉の隙間によぎる人の気配や、くもりガラスに映る影から状況を読み取った家族から「今日は大入り、客2人」「無駄に朝9時から開店」など、活発に報告が行われていた。

実際に確認に行く必要があるだろう。
面白ネタを世に晒すことが生きがいのちびろっくが、無視できるはずはなかった。が、対峙するのが怖かった。

いつか、いつかと先延ばしにしていたら、ある日突然母親より「突入せり」との報が。弟と2人で出向いたとのこと。

報告を要約すると、

「クッソマズイwwwwwwwwwww」


母親はもともと、それほど食にこだわりがなく、結構まずい定食でもチープなファミレスでも、大体のものを「おいしい」と食べられる人間である。そんな母親からの「クッソマズイ」報告。これはただごとではない。

後日、口頭で受けた報せでは、

「店に入った途端2人とも無言に」
「ラーメンがソーメン」
「志村けんのコント」
「チャーハンに謎の黒い物体」
「チャーハン付随のスープが木箱に格納されている」

混乱の極みである。
より一層、身をもって体験する必要性を感じたちびろっくは、「そうは言ってもねえ」と、恐る恐るながら興味がありそうだった父親と、突入を決行することにした。


アーケード

土曜日、多分今シーズン最後の夏日。いつも通っているアーケードなのに、なんだこの体中をかけめぐる戦慄。戦地へ赴く兵士の気分とは、こういうものなのだろうか。
途中に点在する普通の中華料理屋の看板が、「悪いこと言わないからうちにしときな」と語りかけてくる。気がした。

メールでは余裕なそぶりだった父親は、橋のたもとで落ち合った途端、開口一番「ホントに行くの?」と弱気な発言。

無理だったら他で食べなおせばいいじゃない!と、気を取り直させて店の前で再度、出来の良いサンプルを確認。父親は「どれが食べたいか」ではなく「どれだったら食べられそうか」と真剣に悩んでいる。

第一の関門、「入店」。
大きく息を吸って扉を開ける。

低い声で「いらっしゃい」と我々を迎える初老の兵士。顔つきも動作も、志村けんのヨボヨボ老人を思わせるほど老いてはいない。が、洗剤のCMで「洗濯前」の例として出てくるようなど汚いエプロンで装備を固めている。中国でもカンボジアでも、ここまで濃く広くシミに侵食されているエプロンを見た覚えがない。

薄暗く古びた店内は、ゆうに40人は入りそうな広さではあるが、予想どおり人っ子一人いない。状況を広く見渡すために、厨房から一番遠い隅の席を陣取った。

「エアコン効いてて涼しい…」

父のポジティブ発言が、余計に不安感を煽る。現時点、他に褒められる要素がなにも無いのだ。



メニューを確認。
気になるのは、妙に高い名物シウマイと、名前から具材の手がかりは何も見いだせない「バンメン」
それらも気にはなるが、今回が初戦である我が小隊に冒険する心の余裕はないので、それぞれヤキソバと五目チャーハンという無難な線で攻めることにした。




とりあえず平静を保とうと一服する父。

しかし「入店」という第一難関をクリアし、あとは待つだけと開き直ったので、いつもの通り、最近観た映画や展覧会の報告をしあう。ちびろっく兄弟はこの人の嗜好を自然と受け継いだようで、いつも同好会の調子で会話が弾む。我々がおかれている状況はひとまず忘れた。

「プーシキン展は混雑の割にはイマイチこれといったインパクトがあるものがなくて、強いて言えばルソーの絵がてかあれお客さん????

父が突如声をひそめたので、まさかあ、と思い3時の方向へ振り返ると、作業服を着た中年男性が暑そうに汗を拭いながら立っていた。いやまさか。何かの料金徴収かなんかだろうと決めつけていたが、やがて我々に背を向けて席に着き、初老の兵士が水とメニューを置いた。

客だ……。


意外な展開にざわついていると「おまちどうさま〜」と相変わらずの低い調子でヤキメシが運ばれてきた。




母からの報告にあったような、得体の知れない黒い塊は見られない。思いのほか普通なので拍子抜けだ。

まずスープから。

木箱に格納されているという話が間違いないと確信。体温だ。
そして一応醤油色はしているが、湯に醤油を数滴垂らしただけのようでうまみは皆無。
これはいよいよ笑えなくなってきたぞ…。

本題に入る。
スープの無味に比べたらいささか塩気を感じ、一応エビ等の具も混入されていたので、何となくいけそうな気がして5回ほど口に運んでみた。しかしすぐに後悔することになった。

油で米を炊いたらきっとこうなるんだろうね。


気づいたら油で口の中がヌメヌメ。これ以上いったら胃腸が油で侵食されるとスプーンを置いたところで、父の注文した焼きそばが運ばれてきた。




サンプルより彩りが乏しいが、それほど異常なものには見えない。

と、油断してひと口食べたらこの表情。




そんなことってあるのか。
この秩序だった日本国において、とりたてて安いわけでもない金をとって、活気のある商店街のど真ん中に鎮座して、客にこんなに渋い顔をさせる料理屋が、あるのか。


あるのだ。


またまたー、そんな大げさなと試食。そして父と同じ表情になったと思う。
味が、「薄い」のではない。「無い」のだ。
10必要なところで4しかないとかではなく、完全に0なのだ。
すべての料理に共通すべき「調味する」という概念が、この物体の製作者には、無い。

それでも義理堅い父は、出されたものは残しては悪いと醤油や練りがらしでどうにか対処しようとしたが、最終的に

「手の打ちようがない」

と、すっかり放棄してしまった。

パパ、ごめん……………!


我々が死なない程度に最大限に力を尽くした結果がこれである。




もったいないオバケでも何でも出てこい。もったいないとか言うならこれをひと口食ってみろ。金輪際、無責任にもったいないなんて言えなくなるからな。


このクラスター爆弾級のクッソマズイ物体を作った張本人が厨房からお出ましになった。北大路欣也ばりの舞台映えしそうな線の強い顔に「クリスマスのジョン・マクレーン並に大変重要な仕事をやり切った後」かのような疲労感を滲ませ、配膳係の老兵が腰掛ける隣のテーブルの席につくがお前が渾身の力を注いで作成した物体が我々の脳みそから一生消えない忌まわしい記憶をうえつけたことを忘れるな

父は本をつくる仕事に携わっていたので、語彙は豊富な方なのだが、それでもこの惨状を的確に表す言葉が見つけられずにいたが、最終的に「前代未聞」という一言で片付けた。人間、60年生きていても、知らないことなど星の数以上にあるのだ。

撤退する段階になり、高すぎる代金(体験費)1,400円に父が2,000円を出すと、配膳係の老兵は入り口近くの囲いにぬっと入り、足元の方からお釣りを取り出した。その床には、いつのものかも知れない新聞紙がモリモリと散乱している。突然の夜逃げで家主を無くした廃墟のような有り様である。

最後の最後に度肝を抜いたのが、作業着の客が、何がしか一皿を平らげたのちに、何がしかもう一皿注文していたことだ。それがその作業着の意地なのか、まぐれで料理として完成したものだったのか、真相はわからない。が、我々には完食など、アメリカ大統領に就任することより無理である。

あんなに堂々と店を構えているのに、しかも無駄に朝から開店しているのに、別に客を拒む訳でもないが歓迎する訳でもなく、正常な味覚を持ち合わせていれば作れないような代物で立派な代金をとり、ロクに料理もできないくせに「宴会承ります」とのたまい、客が来ないとか出した料理を残されるとかこれまで何度も経験しているだろうに一向に改善するつもりもなさそうで、それでいてググっても「そんなに悪くない」というブログがポツポツあるだけで、もう、これが一体どういうことなのか、理論的に説明がつかないので、気になる人はとにかく身をもって体験してください。その後、後遺症、トラウマ等が遺ったとしても責任は一切負いません。


翌日。
なぜか今日は無性に中華が食べたい。そうだ、最近中華食べてなかったからかな。パパ〜、今日お昼中華食べに行こうよ。

駅近くの昔ながらの中華料理屋に入り、五目チャーハンとヤキソバを注文した。すぐに、中華鍋をふるう軽快な音が響き、香ばしい匂いが漂い始めた。




彩り豊かで、味がしっかりしていて美味しいね!




やっぱりプロがつくるチャーハンはパラっとしてるね!

すっかり完食し、身も心も満たされて店を出たところで父がつぶやいた。

「つい昨日のことなのに、随分前のことのような気がするよ。」

空が高い。
いつの間にか秋はすぐそこまで来ているんだね。


〜Fin〜
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